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キー値
specdojo.idprj-0001:pjr-36qg-competitive-landscape-and-release
specdojo.typeproject
specdojo.statusdraft
specdojo.rulebookspecdojo:pjr-rulebook
specdojo.part_ofprj-0001:pjr-index
specdojo.item_typenote
specdojo.item_statusopen
specdojo.priorityhigh
specdojo.ownerARC
specdojo.registered_at2026-09-06T13:53:16Z

PJR-36QG 競合状況 ​

1. 概要 ​

Spec-Driven Development(SDD)と AI を用いた開発方式・成果物管理の競合状況を記録する。位置づけと差別化の判断材料とする。

公開作業は prj-0001:pjr-7vkr-npm-release と prj-0001:pjr-0143-vs-code-marketplace で扱う。 本 note は競合の観測に絞る。

本 note は状況の変化に応じて更新する。終端させない。初回調査は 2026-09-06 時点で、Gas Town / Gas City は 2026-09-24、Claude Code / Codex の plan 機能との比較とチームでの利用は 2026-09-30、v0.3.0 の機能の比較、設計文書の領域の比較、ソフトウェア以外の領域への適用の評価は 2026-10-08 に追加した。

2026-10-24 に BMAD・AI-DLC との比較を 3.14. へ追加した。開発方式全体の直接競合として両者を扱う。 それ以前の「独自」「確認できず」という評価は、各節に掲げた比較対象と調査日の範囲に限る。 BMAD・AI-DLC を含む市場全体での独自性を示すものではない。

2. 競合の状況 ​

2.1. 主要な3つ ​

初回調査で選んだ SDD の比較対象である。開発方式全体の競合を網羅する一覧ではなく、BMAD・AI-DLC を含む位置づけは 3.14.1. で補う。

ツール提供元形態配布
Spec KitGitHubCLI(Python)uv tool install specify-cli
KiroAWSIDE(Code OSS 派生)製品として提供
OpenSpecFission-AICLI(Node)npm install -g @fission-ai/openspec

いずれも 2026 年時点で活発である。SDD は既に確立した領域で、後発として参入する位置にある。

2.2. Spec Kit ​

最も広く採用されている。無償、MIT、agent 中立で 38 の統合を持つ。Claude Code、Copilot、Gemini、 Cursor などへ対応する。ワークフローは Spec → Plan → Tasks → Implement である。

機能ごとに独立した仕様ファイルを保ち、機能間の相互作用を分析できる。greenfield(0→1)に最適化 されている。

2.3. Kiro ​

Amazon Bedrock 経由の Claude で動く agentic IDE である。要件、設計、タスクを生成し、人の承認を 経てからコードを書く。仕様が正本でコードは生成物という位置づけを取る。

固有の機能として次を持つ。

  • agent hooks: ファイル変更やパイプラインイベントで agent タスクを自動実行する。IDE 内で 動く GitHub Actions に近い。
  • steering files: プロジェクトの規約、採用ライブラリ、アーキテクチャ判断を Markdown で 持続的に与える。毎回の説明を不要にする。

要件は EARS 記法で書き、タスクは要件へ紐づく。3 フェーズのゲート(要件、設計、タスクと実行)で 人が承認する。

AWS 外では MCP カタログと並列実行の利点を失う。ベンダーロックインの指摘がある。

2.4. OpenSpec ​

軽量な spec レイヤーである。5 コマンド、openspec/changes/ 配下の Markdown、20 以上の AI アシスタントへ対応する。

propose / apply / archive の3コマンドで、提案、実行、履歴への移動を行う。提案、実行中、 アーカイブ済みの監査証跡を保つ。変更が追加・変更・削除した内容だけを記録する差分仕様を生成する。

brownfield(1→n)に最適化されている。既存コードベースの進化を扱う設計で、greenfield には 向かないとされる。

2.5. beads ​

登録簿領域の直接競合である。SDD ツールではなく、coding agent 向けの課題追跡に特化する。

項目内容
提供元Steve Yegge
実装Go、MIT
公開2025-10-12
star26,957(2026-09-07 時点)
配布バイナリ

解こうとする問題は「50 First Dates」である。agent はセッションをまたぐと前日の作業を覚えて いない。この記憶の欠落を、依存関係を持つ課題グラフで埋める。

保存方式は Dolt(版管理付き SQL データベース)を .beads/embeddeddolt/ に埋め込む。git remote に対する bd dolt push / pull で同期する。.beads/issues.jsonl へエクスポートするが、これは 閲覧と交換のための出力であり正本ではない。初期は SQLite と JSONL の組み合わせで、JSONL を git へ commit する方式であった。

主要コマンドは bd create / bd ready / bd update --claim / bd close / bd dep add / bd prime / bd remember である。bd setup claude のように agent 別のフック設定を持つ。

依存の種別は blocks、parent-child、discovered-from、relates-to などを持ち、bd ready が未完了の 依存を持たない課題だけを返す。

Markdown に対する立場を明示的に取る。公式の説明は「plans/ ディレクトリの食べかけの markdown の 山を置き換える」と述べており、SpecDojo とは正反対の前提に立つ。

2.6. Gas Town / Gas City ​

2026-09-24 の追加調査で、beads がより大きなエコシステムの一部であることが分かった。当初は beads 単体を登録簿の競合として扱っていたが、実行基盤の競合を見落としていた。

リポジトリstar作成実装内容
steveyegge/beads27,3912025-10Go課題追跡。agent の記憶の外部化
gastownhall/gastown18,1672025-12Gomulti-agent workspace manager
gastownhall/gascity1,2932026-02Goorchestration-builder SDK

star 数は 2026-09-24 時点。いずれも直近まで活発に更新されている。Steve Yegge が Gas Town を始め、Gas City は community(Julian Knutsen、Chris Sells)が Gas Town を部品へ分解して作った SDK で、エコシステムの新しい方向とされる。

Gas City は「CLI coding agent を束ね、durable な beads の work、再利用可能な workflow、テスト、レビュー、ゲートで回す software factory platform」と自称する。

2.6.1. SpecDojo の exec 層との対応 ​

Gas CitySpecDojo一致度
runtime providers(tmux / subprocess / exec / ACP / Kubernetes / herdr)command_template による provider 抽象高
beads(work store)register高
orders(定期ディスパッチ)routine(routine run --due)高
formulas(再利用可能な workflow)exec plan テンプレート(xep-*)中
gates / tests / reviews親検証と review フェーズ高
health patrol(desired state と actual state の突き合わせ)該当なし-
city.toml(宣言的設定)exec-defaults.yaml + pm-members.yaml高
対応 CLI: Claude / Codex / Geminiclaude / codex / opencode / antigravity / copilot同等

tmux が Gas City の既定 runtime provider である。 agent を tmux セッションで回す方式は、この領域では既に標準的な実装手段であり、後発が同じことをしても差別化にならない。

2.6.2. 対話型オーケストレーターとの関係 ​

Gas City は人と会話する司令塔ではなく、多数の自律 agent を回すための SDK である。数百の並行 agent と enterprise 規模を掲げる。SpecDojo の対話型オーケストレーター(提案 → 承認 → 実行、commit 先の 3 層分離、保護設定)とは目的が異なり、直接の競合は薄い。

競合するのは SpecDojo の exec 層である。executor / reporter pipeline、worktree 隔離、親検証、routine、rate limit 検出は、Gas City の解く問題とほぼ重なる。

2.6.3. 設計思想の違い ​

観点Gas Town / Gas CitySpecDojo
正本データベース(beads)Markdown
目的agent を多数動かす基盤成果物体系を人と agent で維持する
成果物の型持たないkata 106 種
想定規模数百 agent、enterprise単独〜小規模
品質tests / reviews / gatesgrade による継続評価 + review 観点

2.6.4. 判定 ​

「agent を多数回す」競争には参加しない。規模と成熟度で勝てず、tmux による実行や work routing はこのエコシステムが既に押さえている。

SpecDojo の exec 層は、成果物体系を維持するための手段として位置づける。差別化として前面に出すのは成果物 kata の網羅範囲と品質の継続評価であり、実行基盤はそれを支える構成要素とする。beads に対する register の判定(Markdown が正本、kata と実行に接続)と同じ論理である。

3. SpecDojo との比較 ​

4つの視点で比較する。判定は 2026-09-06 時点の公開情報に基づく。各ツールの内部実装まで確認して いないため、「確認できなかった」は「存在しない」を意味しない。

3.1. 考え方のレベル ​

specdojo:specdojo-philosophy が掲げる3方針との対応である。

方針Spec KitKiroOpenSpecSpecDojo
Docs as Code仕様を Git で管理仕様が正本、コードは生成物Markdown を repo へ同左
Kata(実践の型)テンプレートありsteering files規約は薄い4種別を体系化
Human & AI Readability構造化テンプレートEARS 記法差分仕様Frontmatter + 本文

類似: 「仕様を正本とし、コードを生成物として扱う」思想は Kiro と一致する。Git で管理し 機械検証する点は3ツールとも共通で、独自性はない。

独自: philosophy を文書種別として持ち、規約の設計理由を standard と分離している点。他は 規約(何をするか)を持つが、判断原則(なぜそうするか)を独立した正本として扱う構造は確認 できなかった。2.6. 簡潔さと文章量を責務に合わせる のように、AI が冗長な文章を書く傾向へ 対処する原則を明文化している点も見当たらない。

劣位: 思想の記述量が多い。philosophy だけで 177 行あり、導入時の学習コストが Spec Kit の Spec → Plan → Tasks → Implement の4語より明らかに高い。OpenSpec は「5コマンド、Markdown だけ」 を掲げており、参入障壁の低さで劣る。

3.2. kata / ryu / waza の体系 ​

観点Spec KitKiroOpenSpecSpecDojo
型の種別数テンプレートsteering files規約は最小8種別(うち kata 4)
参照度合いの制御確認できず確認できず確認できずapproach で切替
型自体の品質管理確認できず確認できず確認できずgrade

類似: 「AI へ持続的な文脈を与える」目的は Kiro の steering files と同じである。プロジェクト の規約、採用ライブラリ、アーキテクチャ判断を Markdown で与え、毎回の説明を不要にする点は共通 する。

独自: 型を rulebook / recipe / sample / template の4種別へ分け、それぞれが答える問いを 区別している点。「何を書くか」「どう作るか」「どの形から始めるか」「完成形はどうなるか」を 別文書とする構造は他に見当たらない。approach で参照度合いを切り替え、成熟度に応じて fully-guided から retrofit まで変える仕組みも確認できなかった。

型自体を継続評価する grade も独自である。他ツールはテンプレートを提供するが、その品質を測る 仕組みは持たない。

劣位: 種別が多い。8種別のうち kata 4種別を成果物ごとに揃える負担は大きい。本リポジトリで 301文書に達しており、走査で sample の40%が fail と判定された事実は、体系の維持コストが 高いことを示す。Spec Kit や OpenSpec の「テンプレート1つ」の方が導入は容易である。

3.3. 遂行体系 ​

register → exec / timeline → schedule → exec / routine / grade の連携である。

機能Spec KitKiroOpenSpecSpecDojo
課題の登録簿確認できず確認できず確認できずregister
実行の状態追跡確認できず確認できず提案/実行/保管遷移イベント
スケジュール確認できずタスク依存順確認できずschedule(CPM)
定期実行確認できずagent hooks確認できずroutine
worktree 隔離確認できず並列実行あり確認できずexec --worktree
品質の継続評価確認できず確認できず確認できずgrade

類似: OpenSpec の propose / apply / archive は状態遷移を持ち、提案・実行中・アーカイブ 済みの監査証跡を保つ。SpecDojo の登録簿の open → close に相当する。Kiro の agent hooks は ファイル変更で agent タスクを起動する点で routine と目的が重なる。

独自: 実行を登録簿の状態遷移として記帳し、start の actor に実行した agent 名を残す構造。 本セッションで実際に、私が経路を外れて実装した際に記録が欠落し、やり直した経緯がある。この 検知が働くのは記帳が仕組みとして組み込まれているためである。

worktree の統合失敗から統合段だけを再試行する経路(PJR-Y0AH)、agent の設定変更を止めて申し 送りを自動記録する保護機構(PJR-VH6R)も確認できなかった。

CPM によるスケジュール生成は、SDD ツールというよりプロジェクト管理ツールの領域である。この 組み合わせ自体が特徴といえる。

劣位: 機能が多く、全体像の把握に時間がかかる。本セッションだけで統合の欠陥を3件(PJR-REDS、 PJR-E6QJ、PJR-G1QZ)発見しており、機能量に対して成熟度が追いついていない。Spec Kit は38統合、 OpenSpec は25以上の AI アシスタントへ対応するが、SpecDojo は pm-members.yaml で定義した agent に限られる。

3.4. local LLM の活用 ​

観点Spec KitKiroOpenSpecSpecDojo
agent 中立38統合Bedrock 前提25以上provider 設定で追加
local LLM確認できず確認できず確認できずopencode 経由で利用
役割別のモデル使い分け確認できずSonnet と Nova確認できずexecutor/reporter 別
同時実行の制御確認できず確認できず確認できずmax_concurrency

類似: Kiro はタスク種別でモデルを切り替える。仕様生成に Claude Sonnet、コード生成に Amazon Nova を使う。SpecDojo の executor と reporter の使い分けと発想が近い。

独自: local LLM を実運用の段として組み込んでいる点。本セッションの走査では、1段目と2段目を gemma(Ollama)、3段目を codex で実行し、codex 呼び出しを rulebook で72%削減した。ローカル モデルの制約(メモリ競合、モデルロード待ち)を max_concurrency: 1 として設定へ落としている 点も、実運用での知見が反映されている。

Kiro は Bedrock 前提でベンダーロックインの指摘がある。Spec Kit と OpenSpec は agent 中立だが、 local LLM を前提とした段構成やリソース制御は確認できなかった。

劣位: 対応 agent 数で劣る。Spec Kit と OpenSpec は導入時に agent を選べば同じテンプレートが 動くが、SpecDojo は pm-members.yaml と exec-defaults.yaml の両方を設定する必要がある。

3.5. 成果物 kata の網羅範囲 ​

競合3ツールが提供する文書は次のとおりである。

ツール提供する文書数
Kirorequirements.md(EARS 記法)、design.md、tasks.md3
OpenSpecproposal.md、specs/、design.md(任意)、tasks.md4
Spec Kit仕様、計画、タスクのテンプレート3

いずれも「機能単位の変更」を1セットの文書で扱う設計である。要件、設計、タスクの3点セットが 基本形で、ツール間の差は記法(EARS)や粒度(差分仕様)にある。

SpecDojo の rulebook は 106 件あり、成果物の種類ごとに分かれている。

領域例
業務・要件bac(受入基準)、br(業務ルール)、bes/bps(業務モデル)
仕様ifx-api/ifx-cmd/ifx-file/ifx-msg(インタフェース)、sac
設計sysd(システム設計)、cxd/cnd/cpd/cdfd(C4 各層)
データbdd/ccd/cld/cstd/cdsd(データモデル各種)
実装・テストimp-*(実装方針5種)、utc/itc/stc/atc(テスト各層)
トレーサビリティtrc-requirements-to-specs、trc-requirements-to-tests
プロジェクト管理prj-*(憲章、スコープ、前提制約)、pm-*(体制、計画、RACI)

独自: この網羅範囲を持つ競合は確認できなかった。競合は「機能単位の変更」を扱うのに対し、 SpecDojo は「プロジェクト全体の成果物体系」を型化している。C4 モデルの各層、データモデルの 5種類、テストの4層、トレーサビリティ行列をそれぞれ独立した kata として持つ構成は見当たらない。

さらに各 rulebook に recipe / sample / template が対応し、1つの成果物種別あたり最大4文書の kata が用意される。「どう書くか」「完成形はどうか」「どの形から始めるか」を分けて提供する 構造も他にない。

劣位: 網羅範囲の広さが維持負担に直結する。237 件の kata を評価した結果、要修正は 137 件 (58%)であった。競合の3〜4文書に対し、SpecDojo は桁が違う量を保守する必要がある。

また利用者から見ると、106 種類の成果物のうちどれを使うかの判断が要る。競合は「まず requirements.md を書く」で始められるが、SpecDojo は成果物カタログの設計から入る。

3.6. 開始の容易さ ​

「いつでもどこからでも始められる」という利点について検討する。

そのとおりである根拠:

  • approach に retrofit があり、既存の成果物を後から型へ寄せられる。OpenSpec も brownfield 対応を掲げるが、こちらは「変更を差分仕様として記録する」方式で、既存文書そのものを型へ 合わせる仕組みではない。
  • 成果物カタログで必要な成果物だけを宣言できる。106 種類すべてを作る必要はない。
  • philosophy の 2.7. 小さく始めて、必要に応じて拡張する が方針として明記されている。

留保が要る点:

  • 「どこからでも」は成果物カタログを設計してからである。dct-*.yaml で何を作るかを宣言する 工程が先にあり、ここが競合の「まず requirements.md を書く」より重い。
  • 106 種類から選ぶ判断が利用者に委ねられる。選定を助ける仕組み(推奨セット、規模別の プリセット)は確認していない。
  • 本セッションで確認した限り、最小構成で始める手順を示した文書は見当たらない。 specdojo:waza-guide が全体像を扱うが、これは「小さく始める」ための導線とは異なる。

したがって「いつでもどこからでも始められる」は設計思想としては正しいが、それを支える導線が 現状では弱い。retrofit や最小構成の手順を示せれば、競合に対する優位として主張できる。

3.6.1. register 単体での利用可能性 ​

「軽く始められる」という主張の裏付けとして、register が他の機能へ依存するかを確認した。

src/register.ts は getProjectRegisterPath だけを参照する。src/exec-register.ts に catalog への参照はない。catalog や kata を用意しなくても register add / close と exec run --register は成立する。

当初は schedule_path と execution_path が型定義上の必須で、register だけを使う場合も設定を 書く必要があった。一方 src/build-command.ts の isStepApplicable は、各 path が設定されている ときだけ対応する build 段を実行する。path は既に opt-in スイッチとして働いており、型の必須指定 だけが実挙動とずれていた。この不整合を解消し、両 path を省略可能にした(既定値は schedule / execution)。

設定型定義register に必要か
project_register_path任意必要
schedule_path任意不要。省略できる
execution_path任意exec run --register で必要
members_path任意agent 実行時のみ必要
catalog_path任意不要

これにより最小構成は次まで縮む。

json
{
  "version": 1,
  "current_project": "prj-min",
  "projects": {
    "prj-min": {
      "base_path": "docs/ja/projects/prj-min",
      "project_register_path": "controls/project-register"
    }
  }
}

この構成を一時ディレクトリで実測し、register add / start / close / build が動作すること、 登録簿本体と owner / priority / status の3ビュー、および PM 系ログが生成されることを確認した。

3.6.2. backlog としての register ​

register を backlog とみなすと、アジャイル開発の基盤として扱える。必要な要素との対応は次の とおりである。

backlog に要る要素register の対応
項目の追加register add(todo / issue / question など7種別)
優先順位priority(high / medium / low)
期限due
担当owner。人と agent を同じ欄で扱う
状態の可視化register build が status / owner / priority 別ビュー
実行への接続exec run --register

競合3ツールに登録簿に相当する機能は確認できなかった。OpenSpec の propose / apply / archive は個々の変更提案の状態遷移であり、複数項目を優先順位付きで並べて残す台帳ではない。

register 単体の位置づけは、SDD ツールというより「agent への指示と結果が履歴として残る backlog」である。この用途なら kata を1つも用意せずに始められる。網羅範囲の広さが導入障壁に なるという 3.5. の劣位を、register から入る導線で回避できる。

3.6.2.1. git だけで完結すること ​

当初この note は「課題管理は GitHub Issues が担う成熟領域であり、差別化は限定的」と記述して いた。これは比較の軸を誤っていた。Issues と register は同じ土俵にない。

観点GitHub Issuesregister
実体サーバ上の DBリポジトリ内のファイル
取得API 経由git clone で丸ごと
agent からの読み取り認証・トークン・レート制限ファイルを読むだけ
コードとの関係別管理。参照は番号のみ同一コミットに同居
可搬性エクスポートが必要ディレクトリを移すだけ
可用性サービスへ依存リポジトリがあれば動く

重いのは次の2点である。

agent が読める形式であること。Issues を agent に読ませるには MCP なり API なりの経路が要り、 認証とレート制限が付く。register は登録簿の Markdown を読むだけで、ツール統合を必要としない。

同一コミットに同居すること。Issues 運用では、コードは Git、課題はサーバに分かれる。実装の 経緯を追うにはコミットから番号を拾ってサーバへ問い合わせる必要があり、Issue が後から編集されて いても履歴には残らない。register では git log だけで、その時点の判断・実装・記帳を再構成 できる。ブランチを切れば課題の状態も分岐し、マージすれば統合される。worktree で並行実行しても 各 worktree が自分の登録簿を持つ。

この性質は Docs as Code の philosophy から直接導かれる。思想と実装が一致している。

劣位は、ブラウザから起票できない、通知が飛ばない、開発者以外が参加しにくい点である。ただし agent 主体の運用では重要度が下がる。

3.6.3. 未解決: テンプレートの解決元 ​

上記の実測で、別リポジトリから使う際の障害を1件検出した。

specdojoRootDir() は利用者リポジトリのルートを返し、register は docs/ja/specdojo/templates/pjr-*-template.md と pm-*-template.md をそこから読む。npm で インストールした利用者のリポジトリにこれらは存在せず、Template not found で失敗する。

同梱パッケージ側へフォールバックする経路が要る。npm 公開(4.)の前提条件である。

あわせて、同梱対象の template 26 件に specdojo:finding コメントが残っていることを確認した。 実測では finding コメントが生成された登録簿の要約欄へ流入した。公開前に除去するか、生成時に 除去する必要がある。

3.6.4. beads との比較 ​

beads は register の直接競合である。SDD ツール3種とは異なり、比較対象が register そのものに なるため独立して扱う。

観点beadsregister
正本Dolt データベースMarkdown
git が持つものエクスポート(issues.jsonl)正本そのもの
人間可読性bd show を要するファイルをそのまま読める
依存関係グラフ。4種の依存なし
着手可能判定bd readyなし(schedule 側にはある)
同時実行埋め込みは単一書き込みworktree で分離
agent 統合bd setup claude 等ファイル読み取りのみ
導入バイナリ1つNode + 設定
採用26,957 star実質未公開

類似: git を同期の土台にして課題を持ち回る発想は同じである。サーバを立てずに分散させる点、 agent が課題を claim して状態を進める点、監査証跡を残す点も一致する。beads の bd update --claim は register start、bd close は register close に対応する。

agent の記憶を課題として外部化する目的も共通する。beads の「50 First Dates」は、SpecDojo が 登録簿と plan / result で解いている問題と同じである。

register が優る点: 正本が Markdown である。beads は git に置くのがエクスポートであり、正本は データベースにある。git log で差分を読んでも意味が追いにくく、閲覧に bd show が要る。 register は登録簿も個票もそのまま読め、VitePress でも GitHub でも描画される。ツールが無い環境、 将来 SpecDojo を使わなくなった後でも読める。

加えて register は課題と成果物が同じ体系にある。beads は課題追跡に特化し、仕様や設計の kata を 持たない。SpecDojo は登録簿から exec run --register を経て成果物へ接続する。

依存関係と着手可能判定の扱い: beads は依存グラフの4種別と bd ready を tracker 内に持つ。 register にはどちらもない。当初これを欠落と判断したが、誤りであった。

SpecDojo は順序判定を別の層へ分離している。track 間の順序は timeline の depends_on / parallel_group / order、タスク単位の順序と ready 判定は schedule の CPM が担う。 src/schedule.ts が読むのは catalog / timeline / roles であり、register は参照しない。

beads が tracker 内で依存判定を行うのは planning 層を持たないためである。SpecDojo で同じことを すれば timeline と schedule に対する二重実装になる。したがってこれは優劣ではなく、planning 層を 持つか持たないかの帰結である。

register 項目は todo / question / risk などのアドホックな項目で、並び順は human の判断領域に ある。register add に工数・期間の項目もなく、CPM の入力を満たさない。この経緯は prj-0001:pjr-srqz-register-dependencies に記録した。

採用規模: beads は公開から約11か月で 26,957 star を集めた。register は実質未公開である。 「git ベースの agent 向け課題追跡」という枠を beads が先に取っている。

判定: 登録簿を単体機能として比べると、完成度と採用で beads が先行している。register の意味は 「Markdown が正本であること」と「kata と実行に接続していること」の2点にある。前者は思想の 一貫性であり、後者は SpecDojo 全体の設計に由来する。beads は課題追跡として完成度が高いが、 仕様体系と順序計画は持たない。

したがって register を単独の製品として売り込む方針は取らない。SpecDojo の一部として、成果物 体系と実行記帳に接続された登録簿という位置づけを維持する。依存関係と ready 判定の欠落は、 beads との差というより登録簿自体の弱点として prj-0001:pjr-srqz-register-dependencies へ起票した。

3.7. 総合 ​

区分内容
独自性が高い実行の記帳、品質の継続評価、local LLM の段構成、保護機構、kata の網羅範囲
類似仕様を正本とする思想、型による文脈供給、状態遷移による追跡
劣位学習コスト、体系の維持負担、対応 agent 数、機能量に対する成熟度、開始の導線、実行基盤の規模と成熟度(Gas Town / Gas City)

SDD の入口機能では既存ツールに対抗しにくい。差別化の軸は次の3つと考えられる。

  1. 成果物 kata の網羅範囲。競合は機能単位の3〜4文書を扱うが、SpecDojo はプロジェクト全体の 成果物体系を型化する。C4 各層、データモデル5種、テスト4層、トレーサビリティを含む。
  2. 実行の記帳。誰が何をいつ行ったかを登録簿の状態遷移として残す。監査可能性を要する組織に 向く。
  3. 品質の継続評価。文書の劣化を検知する。長期運用する文書体系に向く。

一方、小規模で素早く始めたい用途では OpenSpec や Spec Kit が適する。SpecDojo は「小さく始める」 ことを philosophy で掲げているが、それを支える導線が弱い。ここを整えれば、網羅範囲の広さと 開始の容易さを両立できる。

この位置づけが妥当かは実際の利用者の反応を見ないと判断できない。

2026-09-24 の追加調査(Gas Town / Gas City)を踏まえると、差別化の軸 2「実行の記帳」は慎重に扱う必要がある。実行基盤としては Gas City が同じ問題を解いており、規模で先行している。記帳が意味を持つのは、それが成果物体系と登録簿へ接続されている場合に限る。実行基盤そのものの機能比較へ持ち込まない。

3.8. Claude Code / Codex の plan 機能との比較 ​

2026-09-30、v0.3.0 の公開を前に、利用者から「register と orchestrator は、beads・Spec Kit・Gas City・Kiro・Claude や Codex の plan と比べて優位性があるか」という問いがあった。これまでの比較に含めていなかった Claude Code と Codex の plan 機能を、公開情報(下記の URL)をもとに追加する。

観点Claude Code の plan modeCodex の plan mode / ExecPlan(PLANS.md)register + orchestrator
扱う単位1 つのタスクの手順1 つの長い作業の生きた計画書プロジェクトの記録全体(作業・判断・問い・リスク・観測・変更要求)
置き場所~/.claude/plans/(利用者の全体共通の場所で、Git 管理の外)リポジトリ内リポジトリ内の Markdown が正本
寿命セッションをまたいで残るが、タスクが終われば役目を終える作業が終わるまで長期。判断の経緯まで残る
判断の記録計画の中だけ計画の中の Decision Logdecision / question を独立した記録として持ち、決定ログ・課題ログ・リスク登録簿を生成する
会話との関係会話の中で作る会話の中で作る会話の内容が個票になる。変更前に提示し、承認を得る規律がある
導入設定不要ファイル 1 つの規約Node と設定

類似: Codex の ExecPlan は、計画書をリポジトリに置き、Progress、Surprises & Discoveries、Decision Log、Outcomes & Retrospectives を作業の間ずっと更新する規約である。チャットの履歴ではなく計画書を正とする点、判断を書き残す点で、register の個票に最も近い。

独自: register は、作業以外の記録(判断・保留・リスク・観測・変更要求)を種別ごとの型で残し、決定ログなどの統制文書を生成する。ExecPlan の Decision Log は 1 つの計画書の中の節であり、プロジェクトをまたいで判断を並べ、検索する台帳ではない。Claude Code の plan は Git 管理の外にあり、チームで追えない。register は exec run --register で、agent の実行・検証・統合を個票の状態遷移とイベントとして記録し、git log だけで誰が何をいつしたかを再構成できる。

位置づけ: plan 機能は「このタスクをどう進めるか」を扱い、register は「プロジェクトで何をなぜ決めたか」を長く残す。競合ではなく補完の関係にある。exec の plan(xep-* テンプレートから生成する実行計画)は、タスクごとの計画として plan 機能と同じ役割を担う。

劣位: 導入は plan 機能のほうが圧倒的に軽い。2026-09-27〜29 の 3 日間だけで、再開・統合・並行実行まわりの実行結果を失いかねない不具合を 10 件以上直しており(PJR-R0XA、PJR-CTV4、PJR-FFPK、PJR-GRB5 など)、成熟度は plan 機能に及ばない。オーケストレーターの振る舞いは定義の質に依存し、定義の誤り 1 つ(note の終端、PJR-XW9M)で orchestrator が誤った推奨をした。

参照した公開情報:

3.9. チームでの利用 ​

3.8. の検討で、orchestrator は当初「1 人か小さなチーム向け」と評価したが、利用者から「register は Git で登録簿を共有できるので、チームでも活用できるのではないか」という指摘があった。実装を確かめた結果、同じリポジトリで作業する開発チームであれば十分に使えると評価を改める。

チームで使える根拠は次のとおり。

仕組みチームで使うときの効果
1 項目 1 ファイルの個票(正本)別々の項目を同時に起票・更新しても、ファイルが分かれているため競合しない
乱数で振る ID別々のブランチで起票しても ID がぶつかりにくく、ぶつかっても register renumber で直せる
追記型のイベント変更の履歴と実行者(--by)が残る。統合時にイベントが競合しても、両側の和集合で解決する(PJR-36CN)
一覧やビューは生成物(ignore 済み)一覧のファイルで競合しない。各自が register build で作り直す(PJR-HG98)
ブランチと PR判断の記録(decision)もコードと同じ PR でレビューできる。重い決定は PR で承認する規則がある
docs サイト登録簿の一覧・ビュー・個票を GitHub Pages で閲覧でき、開発者以外もブラウザで読める
担当とロール(owner、PO / PM / DEV)人と agent の担当を同じ欄で扱える
記帳の --commitregister lifecycle の枠を取って commit するため、agent の実行と並行して安全に記帳できる(PJR-9XG4)

PJR-HG98 の統合テストで、2 つの worktree で並行に起票・実行しても統合で競合しないことを確かめている。

チームで使うときに足りない点は次のとおり。

点内容
同じ項目の同時編集同じ個票を 2 人が別々のブランチで書き換えると、Markdown の競合になり、手で解決する必要がある
リアルタイム性他の人の起票や close は、push と pull をするまで見えない。通知もない
権限誰でも close できる。--by は自己申告であり、「決定者は PO」といった権限を仕組みとしては強制していない
開発者以外の起票閲覧は docs サイトでできるが、起票には Git と CLI(または orchestrator)が要る
オーケストレーターの運用各メンバーが自分の agent で orchestrator を動かすため、承認の規律や使う agent をチーム内でそろえる運用が要る

判定: 同じリポジトリで作業する開発チームにとって、課題と判断がコードと同じ commit に残り、agent がそのまま読めるという利点(3.6.2.1.)は、チームでも変わらない。開発者以外が主に起票するチームや、リアルタイムの通知を必要とする運用には向かず、GitHub Issues などとの併用になる。この連携は prj-0001:pjr-5w8c-register-github-integration で扱う候補である。

3.10. 価値の裏付けについて ​

3.8. と 3.9. の評価は、公開情報と、本リポジトリでの利用者 1 人と orchestrator の経験にもとづく。他の利用者が同じ使いやすさを感じるかは確認していない。次の方法で確かめる余地がある。

  • 2〜3 週間かかる作業を題材に、Claude Code の plan や ExecPlan だけで進める場合と、register と orchestrator で進める場合を比べる。1 週間空けたあと再開するまでの時間、過去の判断を探して見つけられるか、誤った変更を途中で止められたかを測る。
  • v0.3.0 の公開後に 3〜5 人に試用してもらい、最初の起票までの時間と、1 週間後も使い続けているかを聞く。

3.11. v0.3.0 の機能と SDD のツールの比較(2026-10-08) ​

v0.3.0(package.json は 0.3.0、npm の公開版は 0.2.1)で出す機能を、公開情報で競合と比べた。競合の内部実装は確認していない。

競合の現状は次のとおりである。Spec Kit は 2026-06 時点で 115k star、2026-08-21 に 1.0 を公開し、agent の統合 38、コミュニティの extension 157、preset 33 を持つ。OpenSpec は 2026-04 時点で 50k star で、2026-09-19 に GitHub Trending に載った。Kiro は IDE に加えて CLI とクラウドの sandbox で動く Web 版を持ち、外部サービスと連携する Powers を加えた。

v0.3.0 の機能Spec Kit / OpenSpec / Kirobeads・Gas City・plan 機能判定
register と orchestrator(Markdown が正本の 7 種別の登録簿、提案・承認・実行、--commit の記帳)該当なし(変更提案単位の状態遷移のみ)beads は DB が正本で依存グラフを持つ。plan 機能は 1 タスクの計画独自
exec pipeline(executor と reporter の分離、worktree、親検証、再開、rate limit からの回復、N 個のプロダクトリポジトリ)Kiro は並列実行と hooks、Spec Kit は workflowsGas City がほぼ同じ問題をより大きな規模で解く劣位〜同等
保護機構(agent による定義・フック・CI の変更を止める、agent の定義の .specdojo/ への分離)確認できず確認できず独自
grade と review(28 観点の継続評価、review は最新の grade を入力にする)確認できずgates や tests はあるが文書の品質評価ではない独自
kata(rulebook 106 種と recipe・sample・template)機能単位の 3〜4 文書、Spec Kit は preset 33なし範囲は独自、維持負担は劣位
local LLM の段構成確認できずGas City は runtime の抽象のみ弱まった。2026-10 の計測で、ローカルモデルは grade の判定に使える水準に届かなかった(prj-0001:pjr-vqb5-agent-grade-comparison)。要約と翻訳には有効
導入(config init / scaffold、devcontainer scaffold、docs-site、docs-lint)Spec Kit は 1 行の導入、OpenSpec は 5 コマンドbeads はバイナリ 1 つ、plan 機能は設定不要劣位
日本語の kata・文書・対話英語中心英語中心独自

当初は SpecDojo を SDD のツールとして Spec Kit と同じ土俵に置いて比べたが、利用者の指摘で位置づけを改めた。Spec Kit などは 1 つの機能を実装するまで(仕様 → 計画 → タスク → コード)を扱い、仕様は実装が済めば役目をほぼ終える。SpecDojo の主な機能は、プロジェクトの仕様と設計を成果物の体系として作るまでであり、それを運用・保守へつなぐ。工程として SpecDojo は Spec Kit の上流に立ち、重なるのは「spec」という言葉と市場での分類くらいである。比較の相手は 3.12. の領域にある。

参照した公開情報:

3.12. 設計文書・判断の記録・文書の維持の領域の比較(2026-10-08) ​

3.11. の位置づけにもとづき、設計文書を作る、判断を残す、文書を保つ、の各領域の競合を公開情報で調べた。

領域見つかったものSpecDojo との違い
設計書を作るarc42 Toolkit。AI agent(Claude Code・Copilot・Cursor など)の skill として arc42 の 12 章を対話で作る。深さの 3 段階(LEAN / ESSENTIAL / THOROUGH)、C4 の図、整合性の lint を持つ発想が最も近い(型に沿って AI が書く)。範囲はアーキテクチャ文書だけで、要件・データ・テスト・トレーサビリティ、品質の継続評価、判断の台帳はない
設計書を作る(日本)生成 AI でソースコードから設計書を作る取り組みが主流方向が逆(コード → 文書)。SpecDojo は文書を先に作り正本とする
判断を残すADR の系統(adr-tools、adrpy-ai、Vercel の adr-skill、Claude Code のセッション中の判断を ADR として残す skill など)判断だけを扱い、agent の skill として汎用品になりつつある。register は論点・リスク・作業も扱い、設計書と実行につながる
文書を保つSwimm。コードと結びつけた文書のずれを CI で検知し更新案を出す(2,000 以上のチーム、商用)対象はコードに近い説明文書で、設計書の体系や型に照らした品質評価ではない
トレーサビリティRTMX。AI 向けの要件トレーサビリティ(CSV、依存グラフ、MCP サーバ)要件とテストの対応に特化し、設計書の本文は扱わない
規制EU AI Act の技術文書の要件(高リスクのシステムは 2026-08 から施行)保たれた設計文書と判断の監査証跡の需要が規制の側から生まれている

判定: 仕様の判断 → 設計書の体系 → 品質の継続評価 → 運用・保守を 1 つにつないだものは見つからなかった。各部分には専門の道具がある(arc42 Toolkit、ADR の skill、Swimm、RTMX)。寄せ集めと見られないよう、1 本の流れとして見せる必要がある。arc42 Toolkit の深さの 3 段階は、approach や規模別の kata の組と同じ問題への答えであり参考になる。

register を入口にする位置づけ: 利用者の提案により、register を「仕様を決めるまで、そして仕様を保つための台帳」と位置づける。仕様を決めるまでは question・decision・todo・risk で論点と判断を残し、決まったら設計書(kata)へ反映し、運用・保守では change-request・issue と grade で設計書を保つ。kata を用意せずに始められ、使ううちに設計書の体系へ進める。一方、「登録簿」という言葉と種別の一覧だけでは「git に置く課題管理」と受け取られやすく、価値の核心である「判断が設計書につながること」が見えにくい。打ち出す言葉と、起票から設計書の更新・変更要求までを通すクイックスタートで補う必要がある。戦略は prj-0001:pjr-nyzr-adoption-strategy で決める。

参照した公開情報:

3.13. ソフトウェア以外の領域への適用(2026-10-08) ​

利用者から「仕様と設計を決める仕組みはソフトウェア開発に限らず使えるはずで、競合に対する優位性になるか」という問いがあり、公開情報と本リポジトリの kata の構成から評価した。

構造上の特長: 3.11. と 3.12. で比べた道具は、いずれもソフトウェア専用である。Spec Kit / Kiro / OpenSpec は最終成果物がコードで、arc42 Toolkit・ADR の skill・Swimm・RTMX も対象がソフトウェアの文書に限られる。SpecDojo の中核は領域に依存しない。

  • register の種別(question・decision・risk・change-request など)は、論点と判断を残す一般的な型である。
  • kata の 4 種別(何を書くか・どう作るか・どの形から始めるか・完成形)は、文書体系の種類を問わない構造である。
  • grade による型に照らした品質評価と、提案・承認・実行の進め方も領域を問わない。

kata を差し替えれば別の領域の文書体系にも使える設計であり、SDD のツールは構造上これを持たない。

優位として打ち出しにくい理由:

  1. 現在の rulebook 106 種はソフトウェア寄りである。そのまま使えるのは pjr・prj-*・pm-*・br・bps/bes・bac・gl などの一部で、大半(C4 系、ifx-*、imp-*、utc/itc/stc、sysd など)はソフトウェア専用である。他の領域への適用は、現時点では機能ではなく可能性にとどまる。
  2. 利用者の前提が開発者である。git・worktree・npm・CLI・テストによる検証を前提とし、法務・研究・製造などの利用者には 3.7. で劣位とした開始の導線の弱さがさらに大きく効く。
  3. 領域が変わると競合も変わる。ソフトウェア以外では、Confluence や Notion の AI 機能、ISO 9001 などの文書管理、製造業の PLM、規制対応の文書管理が既にあり、git と Markdown を正本とすることはむしろ不利に働く。git 上で判断と規約の文書を管理する汎用の試み(Data-Olympus など)も現れている。
  4. 位置づけが薄まる。3.11. と 3.12. で「SDD の上流で仕様と設計の体系を担う」と絞り込み、寄せ集めと見られないよう 1 本の流れとして見せることを課題とした。「何にでも使える」を加えると、この絞り込みと逆に働く。3.10. のとおり、ソフトウェアでの価値も利用者 1 人の経験でしか確かめていない。

判定: 見出しの差別化の軸にはせず、設計上の拡張性として扱う。README では、成果物の型へ広げる節で「kata を差し替えれば別の領域の文書体系にも使える」と添える程度にとどめるのが妥当と考える。

確かめる順序: 適用を試すなら、一般の業界ではなく、git・Markdown・レビューの文化を共有する隣接領域から始める。候補はインフラ・運用の設計、データ分析・ML、研究開発の文書、規制対応の技術文書(3.12. の EU AI Act の線上)である。1 つの領域で手応えを得てから、優位として打ち出すかを prj-0001:pjr-nyzr-adoption-strategy で判断する。

参照した公開情報:

3.14. BMAD・AI-DLC との直接競合の比較(2026-10-24) ​

利用者から「直接の競合は BMAD・AI-DLC ではないか」という指摘を受け、公式文書を確認した。 本節は公開情報からの観測と評価であり、両者を導入して比較実行した結果ではない。 確認時の BMAD 公式サイトの表示版は v6.12.0、AI-DLC Workflows の README の表示版は 2.11.1 である。 参照先は更新されるため、以下を将来の版にも適用できる固定的な評価とはしない。

3.14.1. 競合の捉え直し ​

比較の起点を「同じ機能を持つか」だけでなく「同じ目的のために利用者がどちらを採用するか」に置く。

対象主に重なる領域比較上の位置づけ
BMAD Method要件・設計・成果物・専門 agent・承認・実装・検証開発方式全体の直接競合
AI-DLCAI と人の役割分担、工程、判断と実行の管理方法論と、その実装である Workflows を含む直接競合
Gas Town / Gas Cityagent の実行・並列化・作業管理・統合主に exec 層の競合
Spec Kit / OpenSpec / Kiro仕様から計画・実装へつなぐ流れ仕様駆動の領域での競合

Gas Town との思想の対比は prj-0001:pjr-q3w9-gastown-design-philosophy に残す。 それだけから SpecDojo 全体の差別化を導かず、BMAD・AI-DLC を比較の中心に加える。

3.14.2. BMAD Method ​

BMAD は、専門 agent と workflow を既存の AI coding tool に組み込み、企画・要件・設計から実装・検証までを扱う。 公式の説明は、人が専門的判断を担い、AI が進行を支援することを重視する。 計画と判断をファイルに残すため、「文書を介して人と agent が仕事を引き継ぐ」という点で SpecDojo と重なる。

直接競合となる理由: 利用者が要件と設計を明示し、専門的な役割を使い分けて開発を進めたいとき、両者は代替候補になる。 「SpecDojo は上流、競合は実装」という対比だけでは BMAD との差を説明できない。 また BMAD の公式ドキュメントは、計画支援だけの利用や小さな変更からの開始も案内している。 段階的に導入できることも SpecDojo だけの利点には数えない。

3.14.3. AI-DLC と AI-DLC Workflows ​

AWS の AI-DLC は、Inception・Construction・Operations を通じた人と AI の協働を示す方法論である。 方法論の解説と、実行可能な実装である awslabs/aidlc-workflows は区別して比較する。 従来の 3 フェーズの説明だけで、現在の Workflows の構成を言い尽くしたものとはしない。

確認した Workflows の README は、複数の coding tool 上で共通の engine を動かし、依頼に応じて workflow を選び、 不足する判断を人に尋ね、承認ゲートで停止する構成を示している。永続的な状態と監査履歴も掲げる。 したがって、AI-DLC を「考え方だけ」、SpecDojo を「実行できる仕組み」として分けるのは不適切である。 また AWS が提供するという理由だけで、方法論全体を AWS 専用・特定 IDE 専用とは扱わない。

直接競合となる理由: AI 開発の工程、判断、成果物、実行と検証を接続する目的が重なる。 SpecDojo の対話型オーケストレーターと exec・記帳の領域も比較が必要である。

3.14.4. 共通点と差別化の候補 ​

比較軸BMAD・AI-DLC との比較からの評価SpecDojo で追加検証する点
人の判断と承認両者も重視しており、承認を挟むだけでは差別化しない判断主体と根拠を後から追えるか
文書と成果物両者も開発の文脈を成果物として残す成果物同士の関係と変更影響をどこまで扱えるか
専門 agent と workflow役割分担と工程の構造化は共通する引き継ぎの欠落や再開時の手戻りを減らせるか
実行・検証・履歴両者を実装・レビューまで含めて比較する必要があるregister と exec の接続、再開・統合の実用上の差
型と品質の維持kata の種別分離と grade は比較すべき構造上の特徴両者の拡張・品質評価と同一条件で比べたときの効果
計画の導出catalog・timeline・CPM による schedule は差の候補両者の計画・追跡方式に対し、維持負担に見合うか
導入負担BMAD にも小さく開始する導線があり、軽さを独占できない最初の成果までの時間、設定量、継続利用の負担

「両者にない」と断定できる機能差は、今回の公開文書の確認だけでは確定しない。 kata・登録簿・catalog/schedule・grade の接続は SpecDojo の特徴として説明できるが、 競合より高い品質や低いコストを実現するという優位性は未検証である。

3.14.5. 既存の評価への影響と確かめ方 ​

3.11. と 3.12. の「上流」「一つにつないだものは見つからなかった」という評価は、BMAD・AI-DLC を含む結論へ一般化しない。 同様に、Git 管理の文書、人による承認、専門 agent、判断の記録、段階的導入をそれぞれ単独の独自性とはしない。 prj-0001:prj-comparison-of-alternatives にある BMAD の責務重複による非採択は併用の判断であり、 利用者にとって代替候補となるかという競合の判断とは別である。

次に比較実行するなら、同じ小規模の変更と既存プロジェクトへの変更を題材にし、 入力・完了条件・利用モデル・検証条件をそろえる。導入から最初の成果までの時間、 人が補った判断、要件から検証までの追跡可能性、変更後の文書の整合性、再開の容易さ、維持工数を測る。 本 note の追記によって採用方式や位置づけを正式に変更したものとはせず、結果を位置づけと導入戦略の判断材料にする。

参照した一次情報(2026-10-24 確認):

4. 関連ドキュメント ​